仲裁規則
JCAAにおいて仲裁手続を行う場合、当事者は、3つの仲裁規則の中から当事者のニーズに合った規則を選択することができます。それぞれのニーズに対応した規則の特徴は、下記の各規則の解説をご参照ください。仲裁合意において当事者が仲裁規則を特定せず、単にJCAAのもとで仲裁を行う旨のみを規定していた場合には、商事仲裁規則が自動的に適用されます。
2021年7月1日以降に申立てのある仲裁事件については、新しい迅速仲裁手続が適用されます。詳細は、規則改正の紹介ページを御確認ください。
UNCITRAL仲裁規則(2010)+UNCITRAL仲裁管理規則(2021)
UNCITRAL仲裁規則は、
- 国連の国際商取引委員会(UNCITRAL)が作成した仲裁規則で、当事者が属する国の法制度に関わりなく受け入れやすい標準的な内容です。
- 仲裁機関が手続管理を行わない、いわゆる「アドホック仲裁」、すなわち、仲裁人と当事者のみで行う仲裁手続において利用される仲裁手続のモデルとなる規則です。
UNCITRAL仲裁管理規則は、UNCITRAL仲裁規則に基づきJCAAが事務局として仲裁手続の初めから終りまでをフルサポートをする上で必要な事項について定めたものであり、UNCITRAL仲裁規則を補完するものです。
【UNCITRAL仲裁規則は、当事者のこのようなニーズに対応します】
- 特定の仲裁機関ではなく、国連が作成した規則のほうが受け入れやすいと考える方。
- アドホック仲裁を含む仲裁手続について一定数の経験があり、手続の進め方の詳細についても、仲裁手続開始後に基本的に当事者で合意しつつ柔軟に決めていくことを想定している方。
- 仲裁人報償金は、実際の紛争規模や事案の複雑性等に応じて、幅広い時間単価の中からJCAAが適切な単価を設定し、報償金の上限も設けないなど、事案に応じた柔軟性を最大限確保したい方。
商事仲裁規則(2021)
UNCITRAL仲裁規則の規定を基礎にし、その上で、最新の国際実務を反映した規定を備えています。また、実務上争いが生じ得る論点についてきめ細やかに対応した仲裁規則です。
特徴的な規定は以下のとおりです。
- 迅速仲裁手続に関する規定(紛争金額が3億円以下の事件に適用されます)
- 緊急仲裁人による保全措置命令に関する規定
- 複数の契約から生ずる紛争を1つの仲裁手続で解決することに関する規定
- 多数当事者が関与する紛争を1つの仲裁手続で解決することに関する規定
- 仲裁手続中の調停に関する規定
- 仲裁人による補助者の利用に関する規定
【商事仲裁規則は、当事者のこのようなニーズに対応します】
- UNCITRAL仲裁規則には無い迅速仲裁手続や緊急仲裁手続など、紛争のより迅速な解決を実現するための手続が組み込まれた最先端の規則を利用したい方。
- 仲裁廷成立後に、当事者双方が話合いによる解決を希望した場合には、調停へスムーズに移行することもできる手続が組み込まれた規則を選択したい方。
- 仲裁人報償金は時間単価制が望ましいと考えつつも、時間単価や報償金の上限等について規則にルールが設けられるなど、費用を可能な限り予測可能なものとしたい方。
商事仲裁規則(2019)
インタラクティヴ仲裁規則(2021)
商事仲裁規則と共通する規定を有しつつ、早期に当事者双方と仲裁廷間並びに仲裁人相互の「対話」を促すことにより、当事者が主張立証活動を効率的・効果的に行うことができるようにするための工夫として、以下のような特徴的な規定を置いています。
- 仲裁廷は、手続の出来るだけ早い段階で、当事者に対し、当事者の主張の整理及び暫定的な争点について書面で提示し、当事者の意見を求めなければならない。
- 仲裁廷は、遅くとも証人尋問の要否について決定をする前に、当事者に対し、重要な争点に関する暫定的な見解を書面で提示し、当事者に意見を求めなければならない。
【インタラクティヴ仲裁規則は、当事者のこのようなニーズに対応します】
- 重要な争点に関する仲裁廷の暫定的な心証を把握し、その後の主張立証活動を含めた手続の方向性について社内で検討するための重要な資料とされたい方。
- 当事者の主張内容や争点について仲裁人がより早期にかつ正確に把握することを期待する方。
- 事実上あるいは法律上の事項について、仲裁廷から当事者に対して質問(求釈明)がより早期にかつ積極的にされることを期待する方。
- 仲裁人の報償金は紛争金額に応じた固定額でよいと考える方。